夏目漱石は、「I love you」を、「吾君を愛す」と訳した学生に
「日本人は愛すなんて表現はしない。月が綺麗ですねとでも訳しておけばいいんだ」
と言った……と、言われています。
が、文献に残っているわけじゃないので、作り話である可能性も大。
主人公に、「Pity is akin to love」を「可哀想だた惚れたってこと」と訳させた漱石なら、あり得るよね〜……ってことで、こんなに定着したんでしょうね。
もう一つ。
二葉亭四迷が、I love youを、「私は死んでもいい」と訳したというのも、眉唾だそうで。
ツルゲーネフの『アーシャ』を四迷が翻訳した中に、「『死んでも可いわ』とアーシャは云った」というくだりは確かにあるそうですが、「I love you」の翻訳とはいえない。
つ〜か、ツルーゲネフはロシア人なんだから、英語をしゃべるわきゃないっつの(笑)
詳しくは、をご覧ください。
「死んでも可いわ」の原文は、? Ваша… ?。
つまり、あなたの……の意味になるとすっぱ抜いてはります。
しかし、明治時代の翻訳家たちが、西洋の小説を訳すのに、適当な日本語がなくて苦労したという話しはよく聞きます。
新陳代謝は夏目漱石の造語だ……と、テレビで言っていましたが、ネットで調べると、「それは間違い」って出てきますね(^^ゞ
漱石より古い用例があるそうです。
でも、「恋愛」という単語は、まぎれもなく翻訳家が作った言葉じゃないかな。古典で見たことないし。
そもそも「恋愛」という大仰な言葉は、日本人の色恋にぴったり来ないように思えてなりません。
「あなたを愛している」より、……たとえば、「私より先には死なないで」の方が、ずっと日本人らしい愛の表現だとは思いませんか?
日本神話をざっと読んでも、「私はあなたを愛しています」という告白は登場しません。
でも、垂仁天皇の、自分を殺そうとした狭穂姫への「あなたは悪くない」というセリフは、強烈なI love youだと思うな、私。
女性から男性へのI love youを選べというなら、須勢理姫の、
「吾はもよ/女にしあれば/汝を徐て/男は無し/汝を徐て/夫はなし」
の歌を挙げたい。
村ごとに恋人を持つ夫への「私の夫はあなただけ」。
ですよ。
カ〜ッ!!
これで浮気する奴ぁ、人間じゃねぇ。
……実際、八千矛(大国主)は、この後パタリと女遊びをやめ、須勢理姫のもとにとどまったと神話は語ります。
さて。
あなたは、愛する人に、どんな「I love you」を贈りますか?
私なら……ん〜……そうですねぇ。
「革靴を履いて、夏の炎天下を一日中歩いたとするやん?そのとき履いてた靴下のにおいを嗅がれても恥ずかしくないのは、あ・な・た・だ・け♪」
なんてどうでしょう?
……色気なくてすんません……。
そもそも日本人は、でした。
「言葉にしないI love you」に、あふれてるんでしょう。
でも、相手のある「大切な想い」は、言葉にしなきゃダメだとも思うの。
言葉は発せられてこそ、力になるという思想もあるんですから。
とはいえ、「I love you」以外の言葉で表現された「I love you」の方が多いんだろうなぁ。
それを感じ取れるかどうかは、受け手の感受性次第か……。
I love youの表現は人それぞれ。
神話だけじゃなく、国や時代の違う小説を読むとき、「はっきり言葉にはしないI love you」を探すと、面白いかもしれません。
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